これは倫理的な問題を抜きにして、技術的な問題に絞った上での結論です。
NameTag などが顔認識のサービス化を進めておりますが、Google では顔認識を伴う Glassware (アプリ) を禁止しています。
従って、Google が顔認識を許可しない限り Glass で顔認識できない (※) わけですが、それを抜きにしても普及は遠いと考えられます。
※野良アプリならば、顔認識のアプリを提供すること自体は可能です。ただし、実用的ではないでしょう。
①計算量の問題
仮に、イメージしやすい数字として
日本国民ほぼ全員が一時間に一回利用する
と仮定して、必要な処理時間を計算してみましょう。
計算のための前提条件:
・一人当たりの照合処理は0.01秒 (スマホ上で処理するとだとだいたい0.1秒なので、その10倍の処理速度と仮定した)
・検索対象は1億人 (国民はおよそ1億人)
・1時間あたりののべ利用者は24億人 (1*24h)
ではまず、一人のユーザーが誰かを一回だけ顔認識する処理時間を考えてみます。
最速: 1人 × 0.01秒 = 0.01秒
最遅: 1億人 × 0.01秒 = 1000000秒 = 約278時間
平均: (0.01秒 + 278時間) ÷ 2 = 約139時間
・・・えー・・・
計算のための仮の数字をいろいろ用意しましたが・・・
この時点で 終了 ですね。
一億人のなかのたった一人を顔写真データベースから探し出すために、139時間かかります。
しかも、これは検索処理を同時に行っている人が 一人 のときの数字です。
本来は、これの一億倍の時間がかかることとなります (一億人が同時に使うから; ただし、コンピュータを増やしただけ必要時間も低下します)。
さらに悪い(?) ことに、上記の仮定ではサービスとして成り立つレベルにはなりません。
実際には
日本国民ほぼ全員が一秒あたり数回
の顔認識を実行することになります (そうでないと、役に立つ&プライバシー侵害が懸念される レベルになりませんから)。
数字があまりに大きすぎて、前提条件が大幅に変わったとしても、焼け石に水です。
例えばマシンとプログラムを大幅に見直して 照合処理が 0.00001秒になったとしても、サービスとして成り立つ速度にはなりません。
②誤差の問題
どんなに精緻なアルゴリズムを用いたとしても、顔認識の合致率 100% は不可能です。
つまり 合致率 99% のデータが数万件単位で生まれるはずであり、本当に見たい情報が埋もれてしまって役に立ちません。
対象者がスマホを持っているならば、現在位置を併用することで計算対象を絞り込むことも可能かもしれません (でもそれならば、位置情報を使ってサービス展開した方がはるかに早いわけです)。
そして、対象者がスマホを持っていないのならば、現在位置を併用して計算対象を絞り込むことはできません。
つまり、誤差の問題を解決する現実的な手段はありません。
③照合データの準備に関する問題
仮に①②の問題をクリアしたとしても、今度はかんじんの顔データを用意しなければならないという難問が待っています。
Google+ や Facebook のアカウントを持っている人ならばいざ知らず、そうでなければ、いったいどこから顔データを用意してくるのでしょうか。
さて、これらに対するアプローチは3つあると考えられます。
- コンピュータリソースを超充実させる (①、②)
- 顔認識アルゴリズムを劇的に改善する (①、②)
- 検索対象を絞る (①、②、③)
『顔認識アルゴリズムを劇的に改善する』については、優れた数学者が解決してくれるまで待つ必要があります。
あるいは、Glassware のために Google の顔認識API を利用させてもらう? (ご冗談を)
現実的な解決策が『検索対象を絞る』であり、これについてはさらに細分化可能です。
・顔写真のほかに 位置情報等 を利用し、あらかじめ検索対象を絞り込む
・検索可能な人を完全登録制とし、検索対象をごく少数にとどめる
サービスとして実現できるとすれば、後者でしょう。
昨日 Google Glass info の中の方とお話したのですが、例えば 婚活パーティー のようなクローズドな催し物であれば実現可能であると考えられます。
言い方を変えると、クローズドな環境でなければ顔認識ができない。
つまり、街中で見ず知らずの人に顔認識されてしまうことが現実問題としてあり得ないといえましょう。
(少なくとも当面は) 安心ですね。
# 推測に推測を重ねていますので、細かいツッコミはご勘弁ください。
# テキトーに計算しても、実現が遠いということが分かった、というエントリです。
# 2014/02/03 ツッコミをもらいましたので、多少追記しました。
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